リッチ・シェリダン(JOY INC)から学んだこと

技術コンサルブログ

アメリカのミシガン州にあるメンロイノベーションという会社は、社員と顧客を幸福にすることで全米でも有名な会社。その社長リッチ・シェリダンが2018年1月に来日して我々のイベントに登壇してくれました。

2018年1月10日、イトーキの東京イノベーションセンター(SYNQA)において、グローバリング(株)主催、イトーキ、メンロイノベーション、フューチャーシップの協賛によって、イノベーション・セミナーが開催され、ゲストスピーカーとしてメンロイノベーションのリッチ・シェリダン社長が “Build a Workplace People Love – Just add Joy” というタイトルで講演くださいました。

 

ソフトウェア受託開発会社であるメンロイノベーションでの社員の幸せ、顧客満足、組織のコミュニケーション、技術の伝承、仕事と生活のバランスなど、すべてが信じられないくらいうまく行く、その考え方やその状態になるまでのアプローチ方法などを具体的にお話しくださいました。

 

 

ソフトウェア開発会社と聞くと、日本ではブラックなイメージがあって、残業や休日出勤は当たり前で、納期に追われ市場にリリースした後も品質問題を抱えて、とても大変な会社というのが普通だと思っていました。

ミシガン州にある社員40~50人ほどの受託ソフトウェア開発会社は、残業ゼロ、納期遅れナシ、顧客満足度、社員満足度が非常に高い会社で、全米でも注目され、シリコンバレーから見学しに来る人たちがひっきりなしの会社だということを聞きました。

その会社が、メンロイノベーションで、リッチ・シェリダンという社長が率いています。

この会社は、”喜び(Joy)”ということを目指した経営をしてきたとリッチ社長は言います。

「ソフトウェア業界に”喜び(Joy)”という言葉は似あわない。ソフトウェア業界はしばしば人を破壊する。週に60時間以上働かせ、何カ月もの間、家族や友人との時間を犠牲にし、何兆円もの開発費をかけたソフトウェアが、挙句の果てに日の目を見ないこともある。」とリッチ社長は言います。彼自身のソフトウェアエンジニアとしての経験から出た言葉です。

彼と彼の会社は、このようなソフトウェア業界の常識を破るべく、様々なことにチャレンジします。良いと思うことは片っ端から挑戦して、良かったものをドンドン採用していく。失敗を恐れず、逆に失敗を奨励しながら、いろんなことにチャレンジした結果、今の”喜び(Joy)”を手に入れることができ、さらに彼らは進化しようとしているのだと思います。

彼らが採用している業界の常識を覆す施策の一端をご紹介します。

1.プログラマー、品質保証、人類学者(顧客調査)など全員が2人でペアになって仕事を行い、ペアは5日で変える。プログラミングは2人で1台のPCを使う。

2.アジャイル開発手法を採用し、毎週開発したソフトを顧客に渡し、顧客はメンロを訪問した上で、顧客がメンロの開発者にデモを実施する。

3.翌週のスケジュールを顧客に決めてもらうが、タスク毎に見積もらた時間によって異なる高さの付箋を顧客に渡し、32時間の枠の中に付箋を埋め込んでもらうことでスケジュールを決める。

4.すべての人が週に40時間だけしかスケジュールしないので残業は発生しない。

5.40時間の仕事内容は、壁にカードで貼り、進捗を異なる色のマーキングをすることで目で見る管理を行う。

6.プロの人類学者(エスノグラファー)を採用し、エンドユーザーの行動観察によって、本当に顧客が望むソフトウェア開発に注力する。

7.プログラマーはコーディングの前に必ずテがストプログラムを書き、コーディング後に自動テストを行う。仕事量の比率はテストプログラム作成が75%でコーディングが25%。

8.社長を含む全社員が一つの大部屋で仕事をし、気が向くとちょくちょくレイアウトを変える。レイアウトを変えやすくするために、電源は天井から吊るされている。

9.採用は、強い個人プレイヤーは採用しない。優秀なチームプレイヤーを選ぶ。そのために3週間の試用期間に実際にペアで仕事をしてもらう。一度採用したら、退職は引き留めないし、また戻ってくることを歓迎する。

10.職場にペットや家族を連れてくることも自由。

11.口頭での仕事の指示や依頼は禁止。必ず手書きの紙に仕事内容を書くことが仕事をスタートする絶対的な条件にしている。

ソフトウェア開発の経験のある方であれば、なるほどと納得する部分と、いやそれはダメだろうと思うことの両方があるかもしれません。

しかし、彼らはこれらを自分たちでやってみて、うまく行ったものだけを残すという方法で、現在もやり続けていることなのです。

どんなメリットがあるかを私なりに挙げてみました。

  • 顧客と一体となった開発が行え、顧客単独でやるよりもエンドユーザーの満足度が上がる。
  • 顧客が仕事の優先度を決めるので、仕事の進捗に顧客が納得できる。
  • 社内のコミュニケーションが活性化され、技術伝承が自然に進む。
  • 個人に依存しないので、品質が安定し、個人へのプレッシャーも弱まる。
  • 残業の必要がなくなる。
  • 組織としての一体感が生まれ、家族のような会社になる。
  • アイデアや発想が生まれやすい環境になる。

もしかすると、もっと副次的な効果もあるかもしれません。

セミナーには100名くらいの参加者がいて、セミナー後の懇親会でも30~40名くらいの方が残ってくださり、リッチ社長との会話を楽しんでいました。

常識を破るような考え方、アプローチで、とにかくやってみること、そしてやってみて良かったことを続けていったら、とてもいい会社になっていたということ。

社員の幸せ(喜び)、顧客の満足、エンドユーザーの喜びまで達成し、かつプロジェクトの質、社内コミュニケーション、学び続ける組織を作り上げることが、こんな少しの考え方で出来るということが、とにかく大きな学びになりました。

この学びは、「JOY INC」で体験することができます。

 


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プロフィール
賀門 康至

生まれ : 1957年7月
出身/住居 : 東京都出身 横浜市在住
大学の専攻 : 工学部電気工学科
家族 : 妻と娘1人
趣味 : ゴルフ、ホームページ作成
現職 : 製品開発コンサルタント

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